顔面神

経麻痺の概要
顔面神経麻痺とは、ある日突然、顔の半分または一部が自由に動かせなくなる状態を指します。発症すると、まぶたが十分に閉じられず目が乾燥して痛みを感じたり、口がうまく閉じられず食事中に食べ物がこぼれたりするほか、味覚障害や唾液・涙液の分泌異常などの症状も現れます。多くの場合、発症の1~2日前に耳周辺の痛みが先行することが知られており、症状が軽微な場合でも、左右の顔の対称性が失われることで精神的なダメージを伴うこともあります。
顔面神経とは?
顔面神経は、脳幹から内耳道・中耳腔を経由して顔面に分布する重要な神経です。この神経は、顔面筋の運動制御はもちろん、下部の味覚、涙腺、舌下腺などの副交感神経機能にも関与しています。顔面神経麻痺は、この神経が様々な原因により障害されることで、顔面の機能が低下する病気です。
顔面神経麻痺の分類
大きく分けると、顔面神経麻痺には以下の2つのタイプがあります。
1. 中枢性顔面神経麻痺
原因: 脳血管障害、多発性硬化症、脳腫瘍など
特徴: 麻痺は病変とは反対側に現れるため、額のしわ寄せができる場合が多い
2. 末梢性顔面神経麻痺
原因:
片側性: Bell麻痺、ラムゼハント症候群、耳下腺や小脳橋角部の腫瘍、外傷、炎症
両側性: ギラン・バレー症候群、Lyme病、サルコイドーシスなど
特徴: 症状は病変側に現れ、額のしわ寄せができなくなるのが特徴
主な症状
末梢性顔面神経麻痺の場合、以下のような症状が現れます。
表情筋の機能低下:
額のしわ寄せができない
閉眼が不十分、強く閉じると眼球が不自然に回旋する
口角の垂れ、唇や口元の制御不良により、口笛が吹けない、うがいが難しい
感覚障害:
舌前2/3の味覚障害
涙液・唾液の分泌異常
その他の症状:
耳の痛み、高音や自分の声が不自然に響く
平衡感覚の乱れ(特にラムゼハント症候群の場合)
※中枢性か末梢性かを見分ける一つのポイントは、額のしわ寄せの可否です。中枢性の場合はしわ寄せが可能ですが、末梢性では不可能となります。
東洋医学によるアプローチ
当院では、顔面神経麻痺に対して東洋医学の視点から、鍼灸・漢方・気功整体による治療を行っています。治療の基本方針:
問診・診断:
舌診、脈診、全身の症状から体質を把握
顔面周辺および首、肩、耳周囲の筋肉の緊張状態を確認
鍼灸治療:
顔面、首、肩、耳周辺のツボを刺激し、経気の流れを改善
特に、風寒や邪気の除去、血行促進に重点を置く
漢方薬・気功整体:
体質改善と自律神経バランスの調整を目的に漢方薬を処方
気功整体で全身の「気・血・水」のバランスを整える
これらの治療は、病院での標準治療と併用することで、より高い効果が期待できます。当院では長年の臨床経験を基に、顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の有効率を高めるための施術を行っています。
西洋医学による治療と評価
急性期治療
西洋医学では、急性期においては以下の治療が行われます。
副腎皮質ステロイド:
神経炎症や浮腫を改善し、後遺症の予防にも効果的
発症1週間以内の投与が有効とされています
抗ウイルス薬:
特にBell麻痺の場合、ヘルペスウイルスの再活性化が原因とされ、併用が推奨されることがあります
外科的治療
効果が見られない場合や重症例では、顔面神経の減圧手術などの外科的治療が検討されますが、エビデンスの確立には課題が残ります。
評価方法
顔面神経麻痺の程度や予後は、House-Brackmann法などの評価スケールや、神経興奮性試験、筋電図検査などによって判断されます。
自宅でのケアと治療のタイミング
自宅でのケア
風寒対策: マスク着用や、顔面を冷やさない工夫を心がける
角膜保護: 目薬や眼帯で角膜の乾燥を防ぐ
温熱マッサージ: 発症後2週間程度から、温めた蒸しタオルで顔面筋を優しくマッサージし、血行を促進
治療のタイミング
初期(発症~1週間): 病院での診断、漢方薬の服用と西洋医学的治療を開始
中期以降(4日目~完治まで): 鍼灸や気功整体と漢方薬の併用治療が効果的
神経麻痺の場合、早期治療が予後改善の鍵となるため、症状が現れた際には速やかに専門機関での診断を受けることが重要です。
まとめ
顔面神経麻痺は、単なる見た目の問題に留まらず、日常生活に大きな影響を及ぼす病気です。東洋医学と西洋医学の双方からアプローチすることで、早期回復と後遺症の予防が可能となります。当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド治療を実践しており、安心して治療に取り組んでいただけるよう努めています。
もし顔面神経麻痺やその疑いがある場合は、早めの受診と適切なケアをおすすめします。何かご不明点やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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